「あなたの職務は行為そのものにある」

わたし,一昨年まで高校教員でして。
最後は高校3年生の担任をしていました。

高校2年生からクラス替え無しで持ち上がったのですが,高校2年生の秋くらいに一度クラスの雰囲気がビミョ~になったことがあったんですよねー。

ありがたいことに,そういうときに声をかけてくれるすばらしい学級委員も居てくれて。

ちょうど文化祭も終わって,部活を引退して…

さあいよいよ受験モードに切り換え!
みたいなときだったんですよ。

そうするとね,みんな焦ってくるわけです。

いままで部活に打ち込んでて,
わたし,あまり勉強してなかった…

でも,帰宅部の子とか,
もっと前から勉強してる!

部活に一生懸命だった分,
急激なギアチェンジが難しい!

いまから勉強して間に合うんだろうか?

果たして,入試に受かるんだろうか??

…とかね。

そんなお互いの焦燥感や劣等感が表面化して来て,何となくお互いに疑心暗鬼というか,牽制し合うというか,ギクシャクしてしまったんでしょうね。
 
 
うーん,この事態を何とかしないとね~
…ということで,

ロングホームルームの時間に,
どんなクラスにしたいか,
そういうクラスにするために何をしようか…みんなで意見を出し合うことにしたんです。

その名も,「2年4組 High vibe meeting」!

担任としては,実はこれはけっこうな正念場でして,(珍しく⁈)かなり真剣に準備しましたね~。

学級委員も生徒たちもとってもよく協力してくれて,まあ,このLHR自体の効果がどれほどかは別としても,結果,その後クラスの雰囲気は改善に向かいました。
 
 
…さて,そろそろ本題。

実はわたしはこのときに,
yogaで最も大切にされている本『バガヴァッド・ギーター』の一節を引用しました。

(生徒のみなさんはまったく記憶にないと思うけど(笑))
 
 
 
 
あなたの職務は,行為そのものにある。

決してその結果にはない。

結果を動機としてはいけない。

また,無為に執着してはならぬ。(2-47)

(上村勝彦訳,岩波文庫 p.39)
 
 
 
『バガヴァッド・ギーター』は,
『マハー・バーラタ』と呼ばれる古代インドの超~~長い物語の一部を切り取ったもので,『東洋の聖書』とも呼ばれているそう。
 
 
話の中身はですね…

大軍隊を率いる弓の名手アルジュナと,
彼の御者クリシュナ(実は神様の化身)の対話です。

これからまさに血で血を洗う戦闘が始まろうとしている中,アルジュナは,この戦争自体に疑念を抱き,クリシュナに弱気を吐きます。

「ああ…なんでこんな,同族同士で争わなきゃいけないんだ…。無抵抗の私を殺そうというのなら,その方が幸せかも…。」

それを受けて,クリシュナがアルジュナに, yogaの何たるかを大いに語って諭し,
アルジュナの迷いは消えて行く。

(そして,その間戦争は一切進まない(笑))

…かいつまんで言うと、あらすじはだいたいこんな感じです。
 
 
で。

クリシュナがアルジュナに語ったことばの中でも最も有名かつ重要なものの一つがこれ!というわけです。

つまり,この文脈においてはこんなふうに解釈したらわかりやすいかと↓
 
 
あなたの職務は行為そのものにある。
 
→「アルジュナ,君は戦士(クシャトリヤ)なんだから,戦うのが役目だろ!」
 
 
決してその結果にはない。結果を動機としてはいけない。
 
→「勝つとか負けるとか,殺すとか殺されるとか,戦争の結果が重要なわけじゃないんだよ。そのためにやるんじゃないんだよ。」
 
 
また,無為に執着してはならぬ。

→「親族同士で争うのが悲しいとか,殺してくれたらいいとか…じゃあ戦わないとでも言うのか!?そんなハナシじゃないんだよ。
あんたは戦士なんだから!」
 
 
 
現代の受験でも同じでしょ。

結果として志望校に受かるかどうかはわからない。

でも,どうせ受かんないよって勉強しないのは違うでしょ?

受かるかどうかはわからないけど,
とにかく全力を尽すしかないでしょ?

…そういうことですよね。
 
 
これは,老若男女すべてに通ずること。

仕事でも,人間関係でも,闘病でも,恋愛でも…

わたしたちにできることはいつだって,
いわば「人事を尽くして天命を待つ」ことだけ。

そして,それこそがyogaなんだよ,
と,クリシュナは諭すのです。
 
 
言い換えると,

「常に全力を尽しなさい。(常習/常修)
そして結果は手放していなさい。(離欲)」

…ということ。
 
 
yogaって本来on the matのpractice(練習)じゃないんだよ,

それはまさにpractice(行為、実践)そのもの,生き方そのものなんですよ,ということ。

それは、簡単なことじゃないかもしれない。

でも,「無為に執着せず」,
お互いにただ粛々とできることを積み重ねましょ。

結果としての見返りや期待を少しずつでも手放して。

[memo] peak poses
for basic: Setubandhasana
for advanced: Urdvadanurasana

片足をアップしたウルドヴァ・ダヌラーサナ@studio yoggy 北千住